いのサンデー ~ 「お箸の国の人だもの。」 の巻~

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こんにちは、いの です。

水曜日の夜、私と友人は映画を観に行く約束をしていました。
増税に伴い、レディースデーの料金が1,000円から1,100円に値上がりして
しまったのを悲しみながら。
ところが、待ち合わせの時間と場所を相談すべく送ったメールに、
友人から返ってきた内容がこちら。

「すみません、よんどころない事情で行けなくなりました」

どうやら仕事が終わらなかったらしく、私は映画上映までの2時間ばかり、
ぽつんとひとりで取り残されてしまったのです。
時刻は夜の8時。こうなったら孤独と空腹を埋めるために、美味しいごはんを
食べるしか手はありません。

レストランフロアをぐるりとひとまわりして吟味した後、私が選んだのは
とんかつ屋さんでした。なぜなら、店頭の看板にあったカツ丼の写真が
神々しく輝いてとても美味しそうだったから。あと値段がお手頃だったから。
ほど良い混み具合の店内は女性の一人客も多く、私も約束をすっぽかされた
寂しさなど微塵も感じさせないような素振りで席に着きました。

メニューには定番のとんかつ定食、そしてとんかつ茶漬け、なんて変わり種
もありましたが、第一印象から決めてました!とばかりに迷わずヒレカツ丼を
注文。友人に貸そうと思って持っていたエッセイを気取って読みながら
待っていると、木のお盆に乗せられた丼がしずしずとやってきます。
期待に胸をふくらませながらフタを取ると、ふわりと立ち上がる湯気、鼻を
くすぐるツユと油の香り、とろ~り黄金色の玉子でとじられたヒレカツが
お行儀よく並んでいました。

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こうなるともう世界には私とカツ丼、ただそれだけ。
人目も気にせずガツガツと貪ってやる!・・・と気合いを入れた私はここで
あることに気付きました。ないのです、お箸が。
丼のほかにしじみのお味噌汁やキャベツ、お漬物が乗ったお盆の上には
スプーンが置かれているのみ。お箸は影も形もありません。

もしかしてこのお店のカツ丼はスプーンで食べる方式なのかしら。
スプーンでも食べられるひと口サイズに切られているのかしら。
あるいはスプーンでもさくりと切れるくらいに柔らかいってことかしら。

頭の中をぐるぐるいろんな思いが駆け巡ります。
そして悩んでいる間にもカツ丼はどんどん冷めて美味しさを逃がしていきます。
ええいままよ、とスプーンを持ち上げた私の目に、その時ふと飛び込んできた
千キャベツ。
いくらなんでもこれをスプーンで食べるのは無理があるんじゃないか?
そう思った時、私の中で迷いは消え、潔く店員さんに声をかけました。

「すみません、お箸をいただけますか?」
「あらーごめんなさいね!」

どうやら単に付け忘れていただけらしく、私が渡された箸を手にほっと胸を
撫で下ろしていると、隣の席にいたスーツ姿の女性客(こちらもおひとり様)が

「あの、私もお箸を・・・」

と言うではありませんか。
さらにさらに、離れた席に座っていた2人連れの男性客も

「すいませーん!お箸!」

と。
どうやらラストオーダー間際で慌てた店員さんが、ことごとくお箸を付け
忘れていたのでした。奇妙な連帯感に包まれながらいただいたカツ丼は、
本当にスプーンでも切れそうなほど柔らかくてジューシーで美味しかったです。

でもやっぱり、ごはんを食べる時はお箸がいちばん落ち着きます。

それでは、また来週。

※ちなみに、千切りのキャベツのことを我が家では昔から
「千(せん)キャベツ」と呼んでいるんですが、今回のコラムを読んだ
同僚たちから口々に「初めて聞いた」と言われてしまいました。
うーん、一般的じゃなかったのかしら・・・。

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