いのサンデー ~ うなぎとすき焼きと旅番組と父 の巻~

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┃◆┃ いのサンデー ~ うなぎとすき焼きと旅番組と父 の巻~
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こんにちは、いの です。
土用の丑の日に食べそこねたうなぎが食卓にのぼっていたある日の夜。
うな丼だけでも十分ボリュームがあるにも関わらず、肉の賞味期限がせまっているとの理由で、豪勢にすき焼きまで用意されているのを見て、私が食後に胃薬を飲むべきだろうかと考えていると、父が「あ、そうだ」とつぶやいて立ち上がりました。
「はい、これ」
「なんですか、これ」
父が手にして戻ってきたのは某デパートの包装紙に包まれ、ご丁寧にリボンまでかけられた箱でした。手渡されたその軽い箱を持ち上げたりひっくり返したり、しまいには振って中の音を確認している私をよそに、席に戻った父は素知らぬ顔で缶ビールをかたむけています。食べかけのうなぎを放置して箸を置き、箱を開けてみればそこにあったのは真珠のネックレスとイヤリングでした。
「そろそろ冠婚葬祭とか、使う機会が増えてくるだろうし」
「そうですね」
「まあそんな高いもんじゃないけど」
「高いのはまた別途買ってくれるってことですか」
「おまえが結婚するときにな」
買うときお店の人に「イヤリングですか?ピアスですか?」なんて聞かれて迷っちゃったよ、なんて言いながらぐびぐびとビールを飲む父に礼を言い、元通りに包み直した箱をかたわらに置いて、私はまたうなぎを食べはじめました。昨年あたりから法事に参加する機会が増えてきたので、喪服は用意したものの、真珠は母や友人から借りていたのを知っていたんでしょう。冗談めかして「買ってよ」と言ったことはあったものの、よもやこんな風になんでもない日にプレゼントされるとは思ってもみませんでした。テレビからはいつものように旅番組が流れ、隣では父がすでに3本目のビールを飲みながら、うっすらと赤い顔をしています。酔っているのか照れているのかはわかりませんでしたが、なんとなく晩酌に付き合いたい気分になったので、私ももう1本冷蔵庫からチューハイを取り出して飲んでみました。
この先、私がピアスを開けることはなさそうです。
それでは、また来週。

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